All Mine「Dawn Glow」 4



(Yunho)








「ごめんな悪い。助かった」

改札を抜けて俺は、スマホ片手にスウェットにサンダルのチャンミンに手をあげた。

「いいですよ。こんな時間じゃ」
「はぁーあのままじゃ家帰るのまだまだ先だったよ。迷惑じゃなかった?」
「迷惑です」
「ごめん…」
「嘘ですけど。しょうがないでしょ?こんな時間なんだし。知っちゃったし…」
「ほんと有難いよ」

振り返って電車の発車案内を見ると次の日にすっかり入っていた。
こっちの電車に乗り込んだところで運転が再開されたけれど、外まで溢れている人数を考えたらいつ乗れるのかもわからないし、なによりこんな機会はもう無いかもしれないから断る気もない。

ニコニコ顔の俺にチャンミンはなにかを感じ取ったのか呆れたように目を細め
「干してない布団ですけど怒らないでくださいね」
そう言って歩き出した。

「ああいいよ。ソファでもいい」
「そんなのありません…狭いとこなんで」
「あ…あははは」

口を尖らせたチャンミンに慌てて謝って苦笑いをした後、角に大きめのコンビニが見えて指差した。

「悪いあそこ寄っていい?パンツぐらいありそうだし覗いてみたい。ついでに何か飲み物とか買う?明日の朝食とかなんか欲しいのものとか…」
「あ…じゃあ…食パン買って。ユノの無い」
「……ぁ…朝食?」

はっ…と。
疲れで油断しまくっている感情が刺激されて、息を飲む。

…明日の朝もチャンミンがそばにいるのかぁ。
なんて、当たり前のことを再度確認してしまう。

変なイントネーションで質問返しをした俺に、チャンミンは顔を向けると少し頭を傾げた。

「…?…ユノ食べない?」
「いや、軽く食べているけど」
「でしょ?」

ほんとはギリまで寝てることが多いからあんまり食べない。
でも、食べないなんて言ったら朝食の時間は多分無くなってしまう。
嫌だろ、自分から潰すなんて。

「チャンミンパン派なんだ?」
「え?ユノご飯?」
「いーや、頓着ない。どっちでも」
「ふーん」

興味なさげに前を向くけれど
俺は途端に口元が緩んでしまう。

いや、別に普通なんだけどね。
こんな大したことじゃ無いはずの会話に、嬉しく感じてしまうんだ。

なんていうか。
もっとそっけない態度を取られてもしょうがないと覚悟している俺は、こうやって何気ない部分から自分を受け入れてくれているなんて脳内変換してしまう。
おめでたいのか、都合がいいのか。

湧き上がるニヤケた感情を噛み殺し頷く。

「ぁ…牛乳とかコーヒーとか必要なのあったらいいよ俺買うからさ」

顔を見られたら今からタクシーで帰れと言われそうで、俺は足を早めて店内に入った。









「飲む?」

冷蔵ショーケースの前でアルコールに目をやっていたチャンミンに声をかけた。

「ユノ明日何時?」
「え?」
「僕明日はフレックスなんで昼までに入ればいいんです」
「あ、そうなの…」
「じゃなかったらこんな時間に泊まりに来ます?なんて言う訳ないでしょ?」

「あー………そうなんだ。だよね…」

なんだこの想像以上の残念感は。



まぁ、それでもこんな前向きな進展は申し分ないし、嬉しい。

自分がおめでたいと判断がついたところで、まだ名残惜しくケースをのぞいているチャンミンに苦笑して店内の時計に目をやった。

「うーんと…ここからだと7時半に出ればいいから…」

こんな立て続けに寄せてくる機会を逃すわけがない。俺が。

「……飲むか。適当に見繕って取れよ」
「うん。……ワインも買ってもいい?」
「俺あんまり飲まないからな」
「うん、僕が飲む。折角だから余分に買っとこうかな」
「なんだよそれ」

チャンミンがドアを開けしらっと言ったから、俺は苦笑してチャンミンの膝にカゴを軽く当てた。










それから暫く深夜の人もまばらな商店街で会話もなく歩いていたけれど

「あーここ…チャンミン見つけたとこ。覚えてる?」

途中で大きな白い提灯を見つけて俺は顔を向けた。



「はい…忘れるわけがありません…とっ捕まったとこです」

そう返されたから
ため息混じりに苦笑して肩を揺らしてしまった。

「酷いなぁ」
「まさかこんなとこでユノが飲んでるなんて」
「うちの部署でこの辺でよく飲んでいる奴がいてね。安いよぉっていうから」
「安いですね。確かに」
「チャンミナはこの辺で飲むの?」
「たまに友達が来た時とか…」
「オススメは?」
「この通りじゃなくて外の…」
「車通っている方?」
「はい」
「今度連れてってよ」

そう言ったら
はっとして瞳を見開いてから
呆れたようにゆっくり半眼になる。

「……上手いですねぇ…のりませんよ」
「冷たい」
「あなたは昔からそういうの上手かったですからね」

「あなた」なんて言い方が
会えなかった時間を感じて妙にくすぐったい。

お互い大人になったもんだ。

俺を透かし見るその表情は軽蔑か動揺を隠しているのか、感情が動くと瞳が泳ぐ。
そこは昔と変わらない。


「昔は可愛かったのになぁ」
「いま可愛かったら最悪でしょ」
「可愛いよ」
「タクシーは駅1階の右奥ですが」
「うそっごめんなさい」

立ち止まって頭を下げたら、はあっって大きな溜息をあからさまにつかれて首を振られた。

「あなたが相変わらず過ぎて嬉しい限りですよ。全く」

そのまま立ち止まった俺を置いて歩き出していく。

「うん。」

……お前もな。


そう言いたかったけれどその先はやめた。
本当にタクシーで帰らなければいけなくなりそうだ。

ヘラヘラしながら後を追った俺は
角を曲がりかけたチャンミンにその先を指差された。


「あの二階建てです」
「えー駅から近い。商店街超えたらすぐじゃん。羨ましい」
「なんで狭いです」
「いいよ、ぜんぜん。部屋の空いているスペースに寝かせて貰えれば。あー駅から7・8分ぐらい?俺んちは倍以上だよ。そうだ今度うち来てみる?」

そう言ったらまたあの視線を受けた。

「ほんっとユノってアレですね…」

それから今日何度見たか分からない溜息をまたつかれる。

「……まぁ……変わらないってとこは尊敬しますけど」

褒めてんだか貶してんだか分からない台詞を吐かれて

でもその後
「ふふふっ」て
俺が好きな遠慮がちで可愛い笑い方をした。










中に入ってみると想像以上にシンプルな1DK。



狭いから何も置かないんだという。
必要最低限の家具類。
白い部屋にブラックのベッドがやけにカッコよくて。

好きなものを隙間なく色とりどり
自分の世界を作り上げていたあの頃の部屋とは正反対。

小さな二人がけのテーブルに買ってきた酒やツマミを並べていたら、奥から出して来てくれたハンガーと部屋着を差し出されたからお礼を言う。

…チャンミンの服。

当たり前だけれど。
貸してもらって俺着るんだな。

隣に住んでいた俺がしたことなかった事だよなぁなんて気がついたら、こそばゆい。

手にしたスウェットとTシャツに妙な照れを感じて見つめていた俺に
「先にお風呂入っちゃいます?」って
チャンミンが袋から出すのを手伝いながら追い討ちをかけてくる。

「ぁ…先いいの?」
「はい。迎えに行く時沸かしておいたのですぐはいれますから」
「すごいな…」
「なにが」
「お前のマメさ加減」
「ユノは相変わらずなんですか」
「そう」

そう言ったら呆れた笑いを上げる。

「掃除してくれる人いないんですか?」
「いないから汚いんだ」

「ですよねぇ。でも僕なんかずっといなくても綺麗ですけど。元々の問題でしょ?」




…あれ?



って思う。



「うるさいよ、お前」

それでも口を尖らせそう続けたらチャンミンは「はははっ」って笑う。
食器棚にワイングラスを取りに行くその背中を見ながら俺は以前飲んだ時の記憶を辿る。


「いる」って言わなかったっけ。

ちょっとショックだったから記憶違いはありえない。


この前嘘ついた?

それぐらい今自然と「いない」って言った。


なんで。


あの時のどういう流れだったかが思い出せないけれど。
なんだったっけ。
似たような流れだったかな。

突っ込みたいけど突っ込めない。


「あー…じゃあお言葉に甘えて風呂入ろうかな。日付超えてるしな」


俺は答えが出ない疑問を吹っ切るように部屋の時計を見上げた。












----------------------------------
今気づいたのですがコレ最終話以外この後全部ユノsideでした(;´∀`)
それではまた明日。
微妙な関係にお互い慣れてきたのかちょっとずつ近くなっていく二人ですが
なんだかおかげで
ぽろぽろぽろぽろ…
チャンミンのいろんなものが自然と零れてきてます。
ユノどうするんでしょー( *´艸`)
実は今回そんな話。
まったり眺めてやってください(*´ω`*)
とか言いながらもう半ばw




読んで貰えて幸せ♡ありがとうございます。
頑張れるのでポチポチ押していただけたら嬉しいです。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

2 Comments

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/05/16 (Wed) 22:08 | REPLY |   

くるりん@  

Re: ほのぼの^ ^

ゆ*まさま

ちょっ…コロリ猫騙し作戦ってwww
声出して笑っちゃったよ(*´罒`*)
多分ユノすぐ騙されるwwwwww

この話裏で色々考えていながらなるべく普通のやり取りが続くって感じで書きたいんですよね。
意地でもどうでもいい会話続ける二人にしようかと思っんだけど、それ書いていくとお付き合いしてくれる人いなくなるだろうからw
ま、流れ的にもうそろそろ難しくなってきましたが…(´△`)

未来はソファにだらけた感じで肩寄せあって
「ごはん何にしよっかー」って言ってる二人に出来たら(//∇//)

2018/05/17 (Thu) 18:59 | REPLY |   

Post a comment