スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

KARUMONO 5



(Changmin)








男のキスは僕の唇に痛いほど吸い付いた後
角度を変えて舌を割り入れてきた。



「んっ…ゃ…」


顔を逸らして僅かにズレた口から息を漏らすと
すかさず頬に手を添えられて逃げ場を失う。

熱い舌が歯を撫でて、男の唾液が入り込んで来た。



「…ん…んんっ」


経験の無いキツいキスにショックと恐怖が体を襲い
逃げるように着いた腕の肘がガクガクと震える。

頭がクラリとしてきて、意識が飛びそうで。



……このままじゃ…





「やっ…やめ……………っ……」



僕は残っている意識を奮い立てて
片足を男の胸にかけて蹴り上げるように体を引き離すと
唇を袖で拭いて背中を向けた。



逃げようと立ち上がりかけて必死に動かした体は足首に走る激痛によろけてしまう。
それでも両手をついて上半身を起き上がらせるとそのまま片足を引き摺ってヨタヨタと走り出した。





「……足、挫いているのか?」


逃げた僕に予想外の心配そうな声を上げてから
もう一度近づいてくる。



「寄ってくるなっ」

足音が、気配が、恐怖を呼び
振り返って再び尻餅を着くと思い切り叫ぶ。


このままじゃさっきの鬼に囲まれた状態と何ら変わらない。
間違いなくそれより最悪だ。
捕まえるなんて問題外で、もし力づくでそんな事をすればこんな力の強いオヌならさっきの鎌で僕は狩られて一瞬で終わり。
戦うのは無理、今の状況じゃ応援なんて呼んでいる暇もない。





さっきのはなんだよ。


……怖い。


軽い一振りで目の前の鬼どころか、僕の意識の届く範囲の空気が全て変わっている。




なんて力。



そんな訳わからない奴が
僕の名前を呼びキスをするなんて。

こいつの能力と理解出来ない行動に
寒気がするほど震えが起きる。
両手足をバタつかせ赤ん坊のように這って進む僕の後ろからオヌの気配が迫りイヤな脂汗が首元に流れていく。


……どうすれば…………助かる方法はなんだ?


前へ出した手が
ふと揺らいで止まる。



あれ…か。





狩り方にも色々あるけれど、そのうちの一つ。
アレは確か対象者から自分へ危害を加えられない。
本来の使い方と少し違うけれど
今は悩んでいる暇はない。


僕は慌ててポケットから熱が冷めてきた賢者の石と共に、いざという時にと忍ばせていた小さな塊を取り出した。




掌に乗ってしまう程の綺麗な飾りが施された剣。



「ああ……それ…」



男の足が一瞬止まりそんな言葉が聞こえてきたから見上げると、そいつは何故か嬉しそうに瞳を細める。




……なんだ?

いや、早くしないと…。



疑問に手が止まりかけたけれど、時間も無いのを思い出し再びこちらに寄ってくる男を視界の端に確認しながら剣の柄の部分に石をはめ込む。




……よし。

一瞬キラリと光った石を確認してから、僕は剣を両手で持ち男を睨みつけた。




後は呪文。






……えっと……なんだった…?…えっと…。





早く言葉を言わなきゃと焦れば焦るほど声が出ない僕を見て
男は鎌を出すどころか、立ち止まって少し頭を傾げて苦笑している。



「…契約か?」
「えっ?!」
「剣の契約するのだろ?…それはいい」

意味不明な言葉を並べて、最後は「うん」と頷いた。



「な、何……あんた消されるんだぞ」






「………すれば?…お前ならいい」





そう答えて口の端を微かに上げる。





「……なに言って…っ」

全てが予想外すぎて、頭が回らない。




もしかして……僕の力が弱すぎて効かないのか?
簡単に解く方法知っているとか?




僕が緊張と焦りと疑問で戸惑っていると、大きく溜息が聞こえた。




「……遅い…どうした?もしかして忘れたのか?時間を使いすぎるのは好きじゃない…」


それから
また手をパンっと軽く叩いた。

それはさっき見たそれの出現を告げていて
見開く視界にゆらりとあの陽炎が見え、全身が総毛立っていくのが分かる。




……怖い。




息が浅くなって、額に嫌な汗が浮かんで来た。





効くかどうかは分からないけれど、
何もしないよりはマシな筈。
いや、全ての鬼、オヌにだって効くはずなんだ。





だから…、
……え…っと…

……言葉……。


あんなに何回も練習したのに。


目の前で出来ていく鎌を見ながら、記憶を辿る。



……えっ…っと…そうだ。



「……わ…我、汝と盟約を結ぶ。…剣…の契約に基づき、……無限の剣我闇に光を」




そう僕が叫んだ途端、キィンと空気が揺れる音がして


男がピタリと立ち止まった。





……これで取り敢えずは僕は剣に守られるはず。
こいつは僕に手を出せない。




「……はぁっ。出来た…」


膝に手をついて息を出した僕に、陽炎を掴んだ男が頭を傾げた。





「………契約が出来たみたいだな。簡単な呪文なのにそれを忘れてたのか」




男は手から陽炎をふっと消すと宙をあちこち見てから笑い、またゆっくりとこちらに歩いてきた。




「うるさいっ…来るなっ、っうわっ」


叫びながら上体を起き上がらせ慌ててオヌを払うように大きく手を振ったから、情けないほど滑稽にそのまま地面に倒れこむ。






「……イッたぁ…」



眉間にシワを寄せて足首を押さえると、キョトンとした視線と目が合ってこちらが戸惑うぐらいな表情に変わった。





「…え……来るなって……」


男が僕を視線で追いながら呆れた顔をして、ぼそりと呟く声が耳に届く。




「お前契約結んだだろ。何言ってんだ?」


「……ぇ…」



そう言われて

這いつくばっていた僕は、


ハッと息を飲んでしまった。






そうだ……そうじゃんか。

この契約は僕達「狩るもの」の寛大なる慈悲を含んだ珍しいもの。

命を奪う代わりに願い事を三つ叶えてやる。

その間、狩られるものは契約者に危害を加えることが出来ない。
だけどその願い事を叶える迄は終わらないし、終われない。
言い換えれば今ここでこのオヌと契約を結んだ僕は、危害を加えられないけれど、願い事を叶えるまでは解放されない。

基礎中の基礎。



「……逃げられない…」

「…そうだな。俺の最後に付き合ってもらわないとな」


今更そんな事に気づいて口をパクパクさせる僕に、男が目の前迄来て跪き瞳を細めた。






「…じゃあ…俺が消えるまでの間…」

そう言ってスラリと長い指が握手を求め近づいてくる。



だけど今の僕には
目の前に差し出された手が恐怖にしか感じられない。



当たり前といえば当たり前だろ。

石に引き寄せられたとはいえ僕には扱えるとも思えないオヌとの契約なんて。
しかも僕の名前を呼びキスまでされた。

頭の中は混乱と動揺と、なにより目の前で見せられた途轍も無い破壊力を持ったその力。
契約なんて紙以下の、実際履行されていないんじゃないかとさえ思えてしまう。





「寄るなよっ」


尻餅ついている僕に男が跪いて出した手を、叫びながら力いっぱい払い除けた。






パンッと



静かなビル街に音がして



そいつの手が叩かれた勢いで流れる。






ジンジンと痺れる感覚が掌を襲い、多分同じような痛みを感じたであろう相手の手は、ジンワリと赤くなっていった。


「いやだ。あんた誰だよ?なんで僕の名前を知ってる?……望みはなに?…なんでこんなことするの?なにより僕は新米だからあんたの望んだ全てが出来る訳じゃない。こっちに来ないで…………」




驚いた顔にこっちが驚く。



どうしよう。

怖い。

無理だよ。


どうすれば……。



叩かれ停止していたオヌの指先が僅かに動いただけで肩が竦む。




「…………嫌だっ……怖い…」




目が潤んで声が震える。


「……」





目の前の男は少しの間じっと僕を見つめて
一旦視線を外して小さく息を吐き

また手を伸ばしてきた。




だから僕は慌てて体を引き摺ったまま後退りをして大きくかぶりを振った。





「やだっ、触るなよっ……怖いっ。やだっ……」



そう叫んだら涙がジンワリ出て来て
僕はそのまま体を子供のように竦ませる。






恐怖でガタガタ震える体を自分で抱きしめて、嗚咽が口から漏れていく。



どうしよう。

どうすればいい?


こんな奴と
ちゃんと考えずに契約を結んだ自分が

愚かで、情けない。










「………チャンミン」







小さな声が耳に入って動かした視線の先に
今まさに触れそうなぐらい近づいた指先が

迷ったように揺れて止まった。




……。




それ以上は動きそうもない手に、涙で潤んだ視線を上げたら





一瞬


ほんの一瞬。

男の顔が哀しそうに歪んで見えた気がした。






「……怖いか?」

「……」


男が呟いた。




僕は恐怖で「そう」とも「違う」とも言う事さえ出来ない。

とにかく怖くて、されたことに対する困惑が絶え間無く襲ってきて、意識が飛びそうなんだ。
いっそ消された方が楽かもしれない。





僕は暫く声とも震えともつかない嗚咽を繰り返し


オヌはじっと僕を見て


何度も啜り上げ
止まらない震える息が力をなくした頃



「……やだ……怖い」



やっと声を絞り出した。







オヌはその言葉に





「そうだな…………記憶……は…酷だよな…」


瞳を眇める。





……?


僕が眉間へ皺を寄せると


目の前の奴は何故か空を仰いだ。




「……聞いてるか?……言うぞ……そうだな」



そう呟くと、ゆっくり僕に視線を戻して
口元を笑みに曲げ

「……そういえば…言っていたな」




……?

わけが分からず怯えたままの僕を見て、男が目を細める。




「そう……願いは……チャンミンが…俺の虜となれ」




「…えっ」


僕が戸惑いの言葉を吐くと

迷い無く伸ばされた男の手が背中に回り

引き寄せられるままキツく抱き締められた。















-----------------------------------
二個目の願い事。
「episode 0」でチャンミンがユノに言っていた言葉(*ノωノ)




読んで貰えて幸せ( *´艸`)♡ありがとうございました!
頑張れるのでポチポチお願いします!
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

- 4 Comments

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/07/28 (Sat) 22:36 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/07/28 (Sat) 23:47 | REPLY |   

くるりん@  

Re: タイトルなし

ゆ*まさま

こっちはまったくもって台風大丈夫でした!

うーんと…どこまでネタバレしていいのか分からないのですが
このお話単純に言うと、とっても切ないメビウスの輪です。
でも希望を持たせようと思っていますけどね(*ノωノ)

2018/07/29 (Sun) 19:47 | REPLY |   

くるりん@  

Re: タイトルなし

ヤ*さま

いらっしゃいませ(*ノωノ)
名作とか…嬉しいやら申し訳ないやら。
ありがとう(ノД`)・゜・。
ま、どっちかというと迷作ですね…orz

東方神起の二次というのはラストも決められているし、もっと軽い恋愛が向いているのは分かっているんですけどね。
もう、くるりん@は暗くウダウダ、訳分からないものも書く奴だと分かって頂いているので、文句も言われず書かせてもらえるのは本当に幸せに思っています♡

このユノは口にはしないけれど、チャンミンの事をとても愛しています(いた、かな)。
今回途中ぶったきりですが、ずっとユノがどれぐらいチャンミンを好きだったか、それが書いて延々とありますw

駄文なので無理せず、よかったら最後までお付き合いをm(__)m

2018/07/29 (Sun) 20:11 | REPLY |   

Post a comment

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。