KARUMONO 7


(U-Know)










「どこに行くんですか?!」


少し離れた後方から声がかかったから、立ち止まり振り返れば向こうも立ち止まる。
さっきからずっと続く微妙な距離。

「どこって……俺の家に帰るんだが…」

「…………ぁ…」

このままでもしょうがない。
気が動転したままのこの子がなにも指示しないから、しょうがなく自分が動く事にしたら慌ててついて来た。

今の俺の答えに今更な顔をしたから、動いて正解だったらしい。

「ここにずっといてもしょうがない」
「それはそうですが…」
「望みを叶える迄はしばらく一緒にいるんだ。諦めろ」
「望みは今すぐなんとかならないんですか?!」

必死に抗うから鼻で笑って見せた。

「まぁ…今言ってもいいが、お前ここで何かあって一人で対処できるのか?」
「……ぇ」
「三つ叶った瞬間どんなことが起きる?」
「それは……よくは…」

瞳を泳がせ口ごもる姿にため息を吐く。

本当にどこまで蘇らせ
どこまで嘘の記憶を植え付けたのか。

「そんな事も知らなくてどうするんだ?…もしかしたらお前は俺の消滅に巻き込まれる可能性もあるんじゃないのか?」
「……」
「知らないのだろ?」
「僕は新米なんですっまだ修行中みたいなもので。それなのにあなたみたいのと関わってしまったんですからっ」
「……そうか」


途端に不安が浮かんでくる。

確かに俺が願ったのはチャンミンの復活。

だけどそれはこの子がこの先生きていく保証があるわけではない。

……少し甘かったか。
今更心の中で舌打ちする。

願い事はもう一つしか残されていない。

それはもう、決めてしまっているんだ。



「なら上司か先生に聞いてみないといけないな。別にお前が俺諸共この世から消え去る覚悟があるのならいいが……さっきの様子じゃ……」
「じゃあ、き……今日じゃなくていいですっ僕が聞いてからにして下さいっ」
「そうか。じゃあお前はうちに来てくれるんだな?…ああ、そうか…それともお前の家に行ってい…」
「ありえません」
「……だな。じゃあ俺の家に来てくれ…」

選択肢がない状況に狼狽える色が隠せないが、拒否の元気は残っているらしい。
だけどその結果自分で導き出した答えに絶望的な顔をした。

この子も表情は豊かだ。
そこは変わらないんだな。
あのカルモノのトップはどこまでチャンミンにしたのだろう。
それともチャンミンの魂の源は元々こうなのか。

そんな発見に笑ってからまた歩き出した。


「待って下さいっ」

数歩進んでまた声がかかるから振り返ったら、今度は立ち止まらずこちらに寄ってくる。

さっき挫いた箇所が痛むだろうに。
足を引きずりながらも俺を睨みつけるような視線は精一杯の威嚇のようだけれど、軽く押しただけで倒れそうな姿に俺は頭を傾げた。


「よかったら…おぶろうか」
「お断りです。歩けます」
「結構あるぞ。タクシーをつかまえようか…」
「え……どれぐらい…」

既に表情が曇ったチャンミンを視界の隅に、右斜め向こうを指差した。

「ここからなら2キロぐらいか…」
「…………」

しばらく俺の差した先を見つめてから
グッと唇を噛み締め俺の横を抜けて先へ進む。

「……歩きます。行きましょう」


そう口にして歩き始めたのはいいけれど
その後ろ姿はどうにもフラついて、足元がおぼつかない。

立ち止まっている俺から数メートル歩いたところで大きな痛みが走ったのかとうとう足首を押さえて蹲った。


「無理をするな。そこの通りでタクシーを捕まえよう。そんなのんびり散歩に付き合う程暇じゃないんだ」

呆れたため息をつき近付いたら、見上げたチャンミンが俺を見る。

いつもの、あのチャンミンと変わらない姿。
だけどこうも敵意むき出しに睨みつけられたことはなかったな。


虜とは願ったけれど

どこまで出来ているんだか。




苦笑して



ふと


出来れば

もう一度あのチャンミンの笑顔が見てみたいな。


そう思ってしまった。



「……立てるか?」



しゃがんだ姿に手を差し出す。





……でも




笑顔は


この子を死なせてしまった俺には



贅沢だな。





「…ほら、おんぶが嫌ならその角まで頑張って歩け」

また叩かれるのを覚悟しながら
しょうがなくしゃがんだままのチャンミンに右手を差し出した。

「ほら…」


拒否したらどうするか。
最悪担いでいくかと決めた目の前で



「すいません……ありがとうございます」と声が聞こえた。



ムッとしたままの表情だったけれど

伸ばされた手がスローモーションのように動き

迷い無くこちらへ進み
ぎゅっと握りしめ

素直に立ち上がったからただただ驚く。


あんなに拒否したのはなんだったのか。
呆気なさに口が開きそうだ。


そんな俺の空気を感じ取ったのか
チャンミンは今握りしめていた自分の掌をじっと見て
それから眉を下げ
困惑した顔を向けて来た。


「……虜になるというのは……効果があったみたいですね…すごいや」



そう言ってから
ふふっと苦笑した。



その

片目を眇めた笑い方が
あの時のまま過ぎて

俺はその顔を見ている事が出来ずに
タクシーを拾いに大通りへ早足で歩き出した。












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2 Comments

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2018/07/30 (Mon) 23:11 | REPLY |   

くるりん@  

Re: タイトルなし

ゆ*まさま

お話は丁度折り返し地点で終わらせてあります(/・ω・)/
その次から新しい展開になっていくというか。
この先ぶった切り迄はユノがチャンミンに対してどう思い行動しているか、それがよくわかる…というかそればっかりになっておりますw
「ユノ…チャンミン大好きだったんだね…」って思って読み進めていただければ( *´艸`)

2018/07/31 (Tue) 15:53 | REPLY |   

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