All Mine 「選択」 3


(Changmin)








前回から結局そこそこあいた後

相変わらずの僕のイヤイヤを押し切られた形で作られた約束は、美味しいお肉というリクエストに選んでくれた焼肉店。
三大副都心の一つで、駅を中心にオフィス街と歓楽街が広がる場所にあった。



当日駅で待ち合わせた笑顔のユノに手を振って
じゃあ行こうかと
何気なく店名を聞いた時、心臓が竦みあがった。

この街は
世界中から観光客が来るぐらいのショップや飲食店が立ち並ぶところだけれど。

その街の奥の一角には
色も含んだ歓楽街がいくつもあって

その一つは
僕が何年か身を沈めていた、そういう好みを持つ人間が彷徨く街があった。

お店はその近く。



悪いことをしていた訳じゃないし
もう足を向けなくなって1年以上。
自分の中ではそれ以上に前のことだった。

だから急にユノの口からその時によく行っていたお店の名前が出てきたから、罪悪感に近い恥ずかしさが湧き上がったんだ。

会っていなかった時間がユノに見えてしまうような気がして怖くなる。

だから何事もなく
これまで通り今日の食事が済んでほしくて柄にもなく祈ってしまった。



店に入り一番奥のテーブルに案内され
ユノを先に促し後ろについてほぼ満席の店内を見回した。

知ってる人はいなかったから
ほっと息を吐き
ユノが手前に着いたのを見て僕は奥の店内全部が見渡せる席に座った。


ドキドキしつつも久々に嗅ぐいい匂いに少しテンションが上がりながらジャケットを脱いだら、ユノがドリンクメニューを手にとって裏表を軽く見てからもう手を挙げた。

「お前生だろ?俺喉乾いちゃったよ」

そう言いながらテーブルに来た店員に「生二つ」と告げて、驚く僕を上目遣いで見上げて来た。

「どうしたんですか?速攻で。しかも甘いサワーじゃ無いんですか?」
「相変わらず失礼だな」

口を尖らせ料理のメニューを手にしたら早速ジョッキで生ビールが運ばれて来た。

「ほら、とりあえずおつかれな」

どうにもユノのペースが掴めずに、座ってすぐに上げたジョッキを軽く当て口に運んだら、目の前のユノはごくごくと勢いよく飲み始めたから慄いてしまう。

「ユノ?!凄いけど…平気?空きっ腹で…」

ジョッキを置いて思わず止めそうに手が動いた先で
ユノは三分の二を飲み干し、ぷはーって笑顔で僕を見る。

「すっごい喉乾いてたんだ。美味いな」
「うまいけどさぁ、酔うよ?」
「どんどん食えばいいだろ?お前頼んで?ほら」

ユノがメニューを差し出し頭を傾げた視線と合う。


相変わらずの優しい笑顔にほっとして
笑顔で返してしまう。

……うん、そうだよ。

今日はユノと久々に楽しむ。
こんな風に気持ちがあらぬ方向へ行くなんて、勿体無い。

自分に言い聞かせるように言ってから勢いつけて乗り出し、受け取る。

「僕にお任せですか?どうしようかなぁ。高いのとっていい?」
「お前の良心に任せる」
「よしっ大丈夫」
「なにが大丈夫だよっ」

笑いあって、楽しさが湧き上がると同時にこれが壊されたくないような不安も頭をもたげ、ちょっとだけ店内に目を向けそれからメニューを開いた。







「このネギタン美味いなー」
「僕のイチオシです。まだコレ来るから」
「え…何人前頼んだの?」
「追加で5人」
「……」
「口の中見えますよ。大丈夫僕四人前食べます。ってか一人前少ないでしょ?これ」
「…これ以外も結構食ったよな」

厚切りタンの上に別添えの特製ダレがかかったネギを山に盛って、箸で挟むと口に運んだ。

胡麻油とネギの香りに絡んだ肉の歯ごたえがたまらない。
一皿に4枚しかのっていないのが残念。
でも今日はユノが一緒だし、毎回多めにお金を出してくれるから遠慮なく注文してみた。

それよりも。

焼きあがったハラミをもぐもぐしながらまたドリンクのメニューを手にしたユノに眉を下げた。

「もう四杯目いくんですか?」
「うん。お前は?生?」
「顔真っ赤」
「うるさいな、顔にすぐ出るんだよ。あんまり酔ってない」
「そう?」
「そう。すみませーん」

手を上げて店員を呼んでから、僕が皿に運んだ肉を食べる。

「ありがとう。ここ安い割にいい肉だな」
「うん。肉屋直営店」
「成る程ね、あ、ピーチサワーと生。……ここのハラミのタレめっちゃ美味い。味噌もあったっけ?食べようかなぁ」

店員に笑顔でお酒を注文した後、赤い顔を僕に向けそう言った。

いつもよりポワンとして、もう眠そうな目つきでなんだか可愛く見える。

今日は久々だったからお互いの近況から始まって会社の愚痴とかいつも通りのネタを通り過ぎ、お腹もだいぶ埋まってきてちょっとマッタリした時間。

前回ウチに来た話も前過ぎてそれ程触れることもなく、ごく普通の他愛ない会話が気分良かったから、場所さえ違ったらと悔やんでしまう。

「味噌も美味いですよ。とりあえず一人前注文する?」
「うん」

頷いたユノに笑顔で僕も頷いて、ビールを持ってきた店員に注文した。

「口に合わなかったら僕が食べるから」
「うん、平気。食うよ」

ニコニコとした受け答えでアルコールが大分回ってきているのが分かる。
これまでで一番ペースが早い。
明日は休みだからあれだけど、もうそろそろやめさせないとな。

そんな事を思いながら僕はまた気になって、人が動く度店内のチェックをしてしまう。

知っている奴もそれらしいのもいない。
ほっとして
心の中で頷いてビールを口にした。


僕の過ごしてきた時間がユノにバレるのも嫌だけれど、それ以上に嫌なのはユノがそういう世界のやつに絡まれる事。

可愛いなんて嫌がるだろうから言えないけれど、こんな感じでこの界隈なんてあんまり歩かせたく無いんだ。

ユノは元々その気はなくても人を呼んじゃうし、それが酔ってて可愛いとなったらマズイことこの上ない。
ほんとこの店の選択は失敗したよな。食べ終わったらとっとと帰ろう。

口の中で溜息を噛み殺し、自動ドアの開閉音がしたからすかさずチェックを入れてしまう。

「どうした?」

ユノが不思議そうな顔を向け、そのまま焼き過ぎてしまったお肉を取って口に運んだ。

「え?別に。ねぇ今の結構焦げてたじゃないですか、食べなくていいのに」
「そう?平気だよ」

口の端を引き上げそのままサワーを煽る。

「お酒大丈夫なの?」
「なにが」
「いつもと違う。もうやめて下さいね送らないですよ。会社で嫌なことあったんですか?」
「ないよ別に。だって今日はお前がペラペラしゃべって嬉しい。お前も酔っているんじゃない?」
「は?どこが」

僕は睨みつけると
腕を組みこちらに目を眇め笑うユノに眉を下げた。

何言っているんだか。
僕は周りが気になって酔うどころじゃないのに。

食べ始めて1時間。
いつもと違うユノに
このままだと本当に心配になってくる。

やっぱりこんな調子のユノと長居したくない
色んな方向に心配が湧き起こり、勝手に気をもむ僕は



「…………あーねぇ、チャンミン?」


ユノに呼ばれていつの間にか店内に向けていた視線をユノへ戻した。



「はい?」
「悪いんだけどさぁ…」

そう言いながら何故か急に立ち上がるから、その姿を目で追いかけ見上げてしまう。

「……ユノ?」
「なぁ席交換して。俺TV見たい」
「え?TV?」

予想外の言葉に思わず店内の壁にかかったTVに視線をやった。
右斜め向こうの大型テレビが野球のナイターを中継している。
確かに僕の方からよく見える。

「ほら変わって。今いいとこなんだ」
「え……あ、満塁…」

こちらへ回ってきたユノに僕は急かされるように場所を代わると、ユノはお皿と箸をすぐに変え、残っていた肉を口に運んでTVに顔を向けた。

ユノって野球に興味あったっけ?
戸惑いながら僕もTVに視線を向けると、チームの主砲がバッターボックスに立ち確かに今日一番の盛り上がりだ。

「なんだっけこの選手、つい最近も新聞一面に載ってなかったっけ?」
「はい、今ホームラン一番打ってて…」
「ふーん凄いね。あ、打った」

店内がホームランにどっとどよめく。

「ああっ凄いですよユノ、5試合連続ホームランって本当…」
「へぇー…」

頬杖をつきサワーを飲みながら、トロンとした目つきで画面を見つめるユノをみると、さほど興味がありそうにも見えず、僕はベンチで仲間から祝福を受ける選手をもう一度見てからユノに顔を向けた。

「ユノ野球好きでしたっけ?」
「嫌いじゃないよ、あ…俺肉もういいや。もう一度サラダ食べたい」
「もういいんですか?さっき注文した味噌は?」
「あ…あれは食べる。忘れてた」

「あーはーはー」って自分で笑ってメニューをめくるからため息をついてしまう。

「かなり酔ってますよね?」
「何度もうるさいな。お前が思ってるよりは全く酔ってない」
「本当に?」

ドリンクのページに目をやり「うんうん」なんて軽く頷いているから、分かりやすく溜息をつきながら首を振ってしまう。

「もう飲むのほんとやめて下さいよ」
「わかったよ、次はソフトドリンクにする。お前もさぁ…ほどほどにしとけよ」
「え?なにがですか?僕はまだ全然大丈夫ですが…?」

頭を傾げ聞き返したら、ユノは苦笑して「うん、ならいいよ」って言うと店員にメニューを振った。













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明日はユノsideです。




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4 Comments

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2018/08/30 (Thu) 22:55 | REPLY |   

くるりん@  

Re: タイトルなし

み*さま

いやぁ(;´Д`)
多分そこまで怖がらなくても平気な気がしてきた。
そこまでなってない気がするんだけどどうかなぁ…まぁこの後爆弾一応かましてあるけど。
ちゃんと救済してあるよ( *´艸`)

2018/08/31 (Fri) 17:57 | REPLY |   

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2018/08/31 (Fri) 22:31 | REPLY |   

くるりん@  

Re: タイトルなし

み*さま

このお話は好き同士なのに一歩を踏み出さない微妙な関係なので
ちょこちょこ色んな好きが漏れ出ちゃうんですよね( *´艸`)

2018/09/02 (Sun) 18:26 | REPLY |   

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