All Mine 「選択」 5


(Changmin)









「俺アイスコーヒー飲みたい」

赤い顔をしたユノがもうすぐ駅というとこでカフェに目を向け呟いた。


「コーヒーですか?」
「お前どうする?帰る?」
「飲みます」

ユノは僕に少し頭を傾げ聞くけれど、酔いも入っているからかこちらの返事はどうでもいいように一歩目が踏み出されていたから速攻頷いた。

「ユノ今までで一番飲みましたね」
「まぁね……でも全然酔ってない」
「ほんとに?」
「ほんと。凄いだろ、今日は酔う気がしないぐらいテンション高い」
「は?」
「お前と一緒だからかな」
「何言っているんですか」

笑うユノに付いてお店に入ると
もうすぐ9時を迎える駅前は金曜なのもあってかなりの人混みだった。




ユノについて入ったカフェは全国どこにでもあるヤツで、店内に入ると立地もあるのかごったがえしていた。


「混んでるな」
「ですね。テイクアウトで…」

…どちらかというと長居したくない。


さっきの店でユノは「声をかけられた」なんて笑って言ったから、僕はあの瞬間「ほらやっぱり」って怒りたいぐらいだった。
ユノが悪いわけではないけれど、あそこはそういう奴が多い。

ユノは無意識に人を呼ぶのが相変わらずなんだと再認識したし、誘われたと言うからにはそれなりの「気付く」言葉を言われたんだろう。

何を言われたか知りたいけれど
知るのもおかしいし。

僕がまだそうだってユノは知らないよね。
聞けばブーメランで返って来ることもわかる。

こんなんでまだ気があるのか?とか
余計なこと思われるのも面倒くさいし。

そうじゃないし。



イラつきながら壁にかかるメニュー表に視線を向けたら
横で「あいたっ」って弾んだ声が聞こえ
僕が顔を向けた時にはもうスルスルと店の壁側に移動して鞄を置いてしまう。

まったく……
ため息をかみ殺す。

僕は少しでも早くこの駅周辺から離れたいのに。

そう思うのに当のユノはトロンとした瞳を笑みに細め、隙がありすぎる空気を纏い戻って来るから、僕は人目に触れさせたくない心境で手で制した。

「買いますよ」
「チャンミン俺アイスコーヒー」
「座って待ってて」
「うん、ありがとう。優しいね」
「はいっいいから座ってて」

物凄い笑顔。
何度も酔っていないって口にしているけれど、絶対酔ってる。

照れと動揺から素っ気ない態度でユノを追い返すと、僕は溜息をつきつつ店内を見る。

今日はもうずっと、男も女もユノを見る奴は全部気があんじゃないかと思ってしまう。
そんなユノは呑気にスマホを弄って窓の外へ目をやって……………おい、僕にニコニコ手を振るのやめてくれないかなぁ……はずかしい。

ジッと見ていた視線を感じたのかユノがこちらを見て手を振るから、恥ずかしくなってちょっと振り返してからカウンターへ向いた。

……はぁ、あれ平気なんだあの人っ。

頬が熱すぎて片手で顔を覆ってしまう。

あんな笑顔で返された方の気持ちは、あの人絶対分からない。
もう、どうしようもなく人タラシで困る。

僕が震える息を吐き出し瞳を泳がせたら
レジの女の子と目が合って、僕の順番がとっくに来ているのを知った。







「悪いな奢ってくれて。ご馳走さま」
「いーえ、こんなんで申し訳ないぐらいです」

トレイを置いてほっと息をつくと、ユノはコーヒーを一口飲み息をついた。


「なんかすごい喉渇いてさぁ」
「お酒飲みすぎでしょ?結局何杯?まぁだからコーヒー丁度いいんですけどね」
「そうなの?」
「はい、色々…多少ですが相性いいんですよ」
「へぇーじゃあ俺凄いんだ」
「何言ってんだかわかりません」
「え、分かってよ」
「多分一生分かりません」


目の前で笑うユノに苦笑してストローを咥え

何気無く向けた視線が


カウンター近くで



止まる。







「あ、チャンミン…?…やっぱりそうだ…久しぶり」

飲み物の受け取りカウンターでコーヒーを手にこちらを向いていた人が、僕と目が合うと微笑んだ。



「…あ……」


思わず声が出て。



笑顔で


手を振られて

今度は
全く嬉しくない。



だってこの人は。


ユノ以外で唯一の。




……よりによってなんでこの人と会うんだろう。



しつこくてあんまり良くない離れ方をしたから
こんな笑顔をされると、嫌な予感しかしない。




「チャンミン前会ったのいつだっけ?……こんばんは」

黒いシャツに黒いパンツ。
少し長めのウェーブのかかった髪を後ろへ流す。
一目で一般のサラリーマンに見えないのは、長年この奥の街でバーを経営して染み付いた空気からか。

少し年上の
落ち着いた風貌は相変わらず、いつもかけていたフチなしの眼鏡をポケットへかけ、既にお酒の入った笑顔で僕にコーヒーを掲げ、それからユノを見て頭を少し下げた。


「こんばんは」

ユノの声が横から聞こえ
一気に頬が熱くなりもう内心狼狽えまくりで。

どうしようか、そればっかり。



僕を知らない普通の人がこんなにあふれている街で
なんで。

やっぱりあんな事をしたこの前の僕への
なにかの戒めなのか。


もう


なんか頭が真っ白で

ほんと……どうしよう。




今更ながら

僕は今のユノとの関係が心地よくて
自分で考える以上に楽しくて

壊したくなかったんだな。





「チャンミン…仕事帰り?」

狭い通路をぬって嬉しそうな笑顔で近づいてくる姿に僕はコーヒーをトレイに戻し軽く頭を下げた。

「あ…久しぶりです…」

逃げたい気持ちで右手がトレイの端を掴み
なにを話すのかとすぐに掌が汗をかき、指先は痺れて痛い。

「友達とご飯食べてて…」

「あ、そうなの。もうずっと来ないからあの街から足洗っちゃったかと思った」

「…え」


こんな言い方。
別れた時を思い出し腹が立っているのか。

僕の横に誰がいようが構わないような
嫌がらせ気味にそんなことを口にするから
自分でも分かるほどに瞳が泳ぐ。

ユノからはどういう関係に見えるかな。
そう簡単にはそういった類の関係だって思う事は…

「俺チャンミンに振られちゃったから寂しくて暫く泣いて過ごしたよぉ〜、相性良くなかった?」

微かな希望は上から降ってくる言葉にあってけなく壊されて
僕は堪えきれずにユノを見てしまう。





「……」


ユノは頬杖をつきストローを咥えたままその人を見ていたけれど
僕の視線を感じたのか

こちらを向いた。




その瞳が

細まって。



「ぁ…ユノ…ごめん」


拗れた人間関係を作ったのは僕だからしょうがないけれど。
僕のことで
こんな面倒くさい場面に立ち合わせるとかありえない。

しかもユノなんて。




切羽詰まってこの場を逃げ出したい衝動を堪え
咄嗟に謝ると僕は逃げるようにアイツを見る。

「ただの友達なんだ。今日は夕飯だけ…」

もうこれ以上は広げたくない。


「この後は?僕の店これから開けるからこない?そっちの友達も…そういうの好きな人?」

駄目押しで。

「…あ…いや…」

言葉が出ない。



あまりの居心地の悪さに無意識に動かした指先へ


何かが触れた。



「すいません。俺たち今日はもう帰るんです。……お誘い嬉しいんですけど、また今度で」



ユノの声と共に

僕の指先に当たった温もりが
そのまま手の甲をなぞり

最後はぎゅっと上から掴まれた。



驚いた僕が顔を向けると

ユノは僕の手を掴んで
瞳が全く笑っていない笑顔をそいつに向けていた。










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明日はチャンミンsideです。


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8 Comments

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2018/09/01 (Sat) 20:37 | REPLY |   

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2018/09/01 (Sat) 21:13 | REPLY |   

723621mam  

No title

来たね。チャンミンちょっと可哀想だけど、
この偶然は必然なやつでしょ?

2018/09/02 (Sun) 03:23 | REPLY |   

くるりん@  

Re: タイトルなし

み*さま

ユノにはバレバレw
だけどユノは何も言わないで態度で答えます( *´艸`)

チャンミンは離れた理由自体には納得しているからこんなことになっちゃうんですよね。

2018/09/02 (Sun) 18:29 | REPLY |   

くるりん@  

Re: タイトルなし

ゆか*ろうさま

そうそう。
酔っ払いは怖いんです。
でもユノも大人になりました。違うか

2018/09/02 (Sun) 18:30 | REPLY |   

くるりん@  

Re: No title

723621mamさま

今回の「選択」は大きなネタ振り回。
少し関係を変えたかったんだよね。
だからいつものただの飲みじゃないんです(;´Д`)

2018/09/02 (Sun) 18:35 | REPLY |   

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2018/09/02 (Sun) 20:58 | REPLY |   

くるりん@  

Re: タイトルなし

み*さま

いえいえコメ嬉しいですー( *´艸`)
書き手はポチも嬉しいけど同じくらいコメも大好きです。
「楽しかった」の一言でも浮かれちゃうんですw

私どうしても踏み出せない一歩ネタ(笑)が好きなんで足枷かけちゃうんですけど今回はユノのお母さんの一言。
そうですそう簡単にいきません、この話。
ってかユノがそのことに気がついたらこのお話お終いなんですwなので本当だったらもうとっくに終わっててもいいのをここまで延ばしているという( ̄▽ ̄)

2018/09/03 (Mon) 20:19 | REPLY |   

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