All Mine 「選択」 6

(Changmin)








「……すいません…」


「おー」


地下の改札へ向かう階段で
堪えきれずに目の前の背中へ謝ったらそう返ってきた。




ユノはカフェでお酒の誘いを断ったあと
笑いもせず
「じゃあ帰ろっか」って僕にいうと、残っていたコーヒーを一気に飲み立ち上がった。

怒っていると感じる空気を纏いながらも
声をかけてきたやつにはちゃんと頭を下げ、ユノは一瞬僕の行動を確認して席を離れた。


これが会社の同僚だったらどうなっていたんだろう。
あんなやり取り。
カミングアウトに近いんじゃないか?


ユノで良かった

いや、よくないか。

もう…

……どうしようか。


アイツは驚いた様子で僕達を見た後、やっぱり変わらず笑顔で手を振るから、僕は逃げるようにユノの後に続いてその場を離れた。





週末の駅のこの時間はこれから繰り出す人と帰宅する人でごった返し、僕は人の波を避けながらユノの後ろを歩いていたけれど、もう居た堪れずにこのまま人混みの流れに身を任せてはぐれてしまおうかと考えてしまう。

もうここで最後で
連絡取らなければいい話で。

……あ…ユノに住んでいるとこバレているから、最悪引越しでも…

その背中をぼんやりと見つめそんなとこまで考えを巡らせていたら
急にその体が立ち止まり、振り返った。



「チャンミン…」

「…はい…」


ユノは眉間に皺を寄せ
またさっきのように瞳を細め僕を見る。

……あ…

その表情に
僕は自分がいかに自分勝手か気づいた。

怒ってる。


そうだよ。

ユノが嫌な思いをしたのに。
しかも助けてさえくれたのに。

怒られても嫌味を言われても嫌われても
感謝するのが最優先で当たり前で
今の僕はそれが嫌で逃げようとしてた。
違うじゃんか。

「あのさ…」
「あの…ユノ」

なにかユノが口にしかけたけれどそれを遮るように一度頭を下げた。

「助けてくれてありがとうございます。あの…嫌な気分にさせてごめんなさい」

言い終えてすぐにもう一度頭を下げる。

「えっと…ご飯誘ってくれてありがとうございました。ほんと……変な事に巻き込んですいません…」

これでユノが「うん」って言ってここでさよならでいいか。

光沢のあるユノの革靴に視線を向けもう帰る為にと言葉を繋げようとしていた僕は

「チャンミン」

強い口調で呼ばれ頭を上げた。


そこにはさっきとはまた違う真剣な眼差しがあって
僕は心臓が掴まれたような痛みを感じる。

「……」

「あのさぁ…これからお前んち行きたい。それか俺んち来てくれない?」

「……ぇ…なに…」

予想外の言葉に掠れた声が出る。


「なにって…どっちかで宅飲みオール」
「……は…」
「もう気分悪いから飲み直したい。俺はさぁ…今日チャンミナとのご飯を楽しみにしていたんだ」

「ぇ…いや…」

「でも悪かった。俺の選んだ店の選択がまずかったな。自分にムカつくよ」


なにを言っているのか。

困惑で瞳が泳ぐ。

そんな僕を見て
ユノは苛立ったように前髪をかきあげ
息を吐き出すと

「ちなみに選択肢はふたつ。行くか行かないかじゃなくてどっちの家に行くかだからな?」

「えっあの……」
「どっち」
「え」
「どっちか。早くっ」
「ぁ……じゃあ僕んちで…」
「うん、じゃあお前んちな」

うんうんと頷いてユノは少し視線を動かした。

「決まったからにはここからとっとと離れよう。嫌だろ?」

そう言ってユノは笑顔を見せると改札へ歩き出したのに
気まずさ一杯で続こうとした僕の目の前で入場を拒否され豪快にフラップドアぶち当たっていた。

「ああ?!」
「……」

はっとユノがこちらを見て

「……逃げんなよ?逃げたら泣きながら追いかけるからな」

苦笑しながら僕の横をすり抜けた。



「待ってます…」

笑いかえすことも出来ずにぎこちなく頭を下げ先に入ると、居心地の悪さに大きくため息をつく。


この後飲みって…

何話すんだろう。
さっきの事以外考えられないけど。


………あー、やだ。


ほんとやだ。


マジかよ。



……マジか。




ユノになんの話。


避けていた事を
自分の失態で口にするとか。



……最悪だ。


「……顔が死んでるぞ」

ポンっと肩を叩かれて顔を上げると

「そんな顔すんなよ。ただの飲みだよ。…それともさっきので俺のこと嫌になった?」

苦笑してそんなことを言う。

「…まさかそんなの…」

慌てて首を振ったら

「良かった」ってユノは優しく目を細めてから、少し戯けた表情をする。

「じゃあやっぱりさっきアイツと騒動起こさなくて正解だったな。あともう一言あったら胸ぐら掴んで店からひきずり出そうかと思っていたんだよ」
「…ぇ」
「お前よく我慢してたな。何だあの馬鹿は、腹立つ。……行こ」

そう言って僕の腕を叩き歩き出す。





「……」

その後ろ姿に

名前を呼んだつもりだったのに
声にならず。


なんかもう
無性に泣きそうだ。


いや実際目が潤んで。
ユノの背中が霞んでしまうから僕は唇を噛み締める。



やっぱりユノがユノで。

いや

あの頃より遥かに
かっこいいよね。



僕の選択が
間違っていなくて

間違っていない選択が

悲しく感じてしまった。


そう思うのもいけないんだけどさ。





「…あれ?なにやってんだよ。電車もう来ちゃうぞ」

いないのに気がついたユノが振り返って手招きするから

僕は頷き
ちょっとだけ鼻を啜りユノの傍に走り寄る。


それから電車に乗り込んでから僕の顔を見たユノと泣いた泣かないの押し問答が終わる頃には、やっと少し笑えるようになっていた。









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明日もチャンミンside。
チャンミンの家で飲み直し(/・ω・)/


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4 Comments

723621mam  

No title

すごいなあ、ユノ、、、

2018/09/02 (Sun) 20:13 | REPLY |   

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2018/09/03 (Mon) 00:14 | REPLY |   

くるりん@  

Re: No title

723621mamさま

なんか男前←「なんか」だと?!

2018/09/03 (Mon) 20:12 | REPLY |   

くるりん@  

Re: No title

ゆか*ろうさま

こんなことするんじゃなかったとチャンミンが後悔するぐらいな姿www

2018/09/03 (Mon) 20:22 | REPLY |   

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