風のかけらSS 「Christmas gathering next」 4



(Changmin)








「……ユノさん?」

「チャンミナ……よかった…」

ユノさんは僕を見て目を眇めるとそれだけ言って近づいて来る。

どうしてここが分かったんだろうとか、何を聞いたのかとか色々浮かんだけれど、僕はすぐ立ち上がって意味もなくお尻をはたいた。

「あ……ごめんなさい…酔いを醒まそうかと…ユノさんお疲れさまです」

咄嗟に言葉が出なくて
僕は大事な事から逃げてしまう。


「……お仕事延びて大変でしたね…」


最初にその事を謝れば良かったと次の瞬間思ったけれど
もうタイミングも逃して。


……何やってんだよ、僕は。



「……疲れたでしょう?」

背中を丸め、俯いたついでに誤魔化すように顔を拭ってもう一度ユノさんを見たら、やっぱり笑みもなく僕を見つめていたから、空気を変えたくて笑ってしまう。

「いま来たんですか?……ユノさん遅いから一本空けちゃいました。お陰で酔っ払ってちょっと風にあたろうかなんて。地上に出たら駅前が賑やかで。これは散歩しようってっ……いきなり駄目ですよねぇ…あ、ユノさんごはん食べてないですよね。戻りましょう。相変わらずサルティンボッカ美味しくて…」

「チャンミナ、今日はもう他のところでごはん食べ直そう」

「…え?」

「店の前迄来てくれるかな?荷物とってくるから」


真剣な眼差しから逃げるように信号を見たら
もうすぐ青に変わりそうだった。



「いえ…何言っているんですかぁ?」

僕はユノさんの袖を引っ張り、青になった交差点を歩き出す。

「急ぎましょう。酔いが少し治りました。さっきドリア出てきたんです。冷めちゃったかな。あれ前に食べた時美味しいって言ったらまた作ってくれたんです」

歩きながら一人で勝手にしゃべっている僕はちょっと変かなと思ったけれど。
ここで黙ってしまったら、なにかが変わってしまいそうで怖かった。

ユノさんはどこまで知っているんだろうかと気にしながら
チラリと隣を盗み見たら前を向いた表情は眉間に少し皺が寄って、それ以上は見ていることができずに言葉を続ける。

「ドリアね、ユノさんも美味しいって言っていたやつですよ。それにお店で出すのより豪華なんですよ。具がたっぷりで。今日出してくれているのはどれも山盛りなんです。通常のじゃお前足らないだろってリュウさん言うんですよ。酷いなぁ…でも合っているんですけどね…嬉しいです」



あとは……なにを話そう。


泳いだ視線の先に店の入り口が見えたから
僕はほっと息をついて

「冷えてきましたね。早く入りましょう」

と笑顔を向けたのに。


「チャンミナここにいて」

ユノさんは「気がきかなくてごめん」と呟くようにそう言ってダウンを脱ぎ僕にかけようとしたから、慌てて手で制して階段へ足を踏み出した。

「なんでですか?みんな待ってますよ。僕も待ってたんですよ……ユノさん?!」

動き始めた体が強い力で引き止められる。


「チャンミナ。無理して笑わなくていい」


腕を掴まれ足が後ろへ下がってよろけたら、ユノさんに後ろからそのまま抱き締められた。

「ユノさ…どう…」

……したんですかって言いたかったのに。


「…嫌な思いさせたよね…ごめん」

肩が竦むほど掠れた声がユノさんの息と共に耳に当たる。


「……なんでですか?…謝る事なんてなにも…」
「そう?じゃあなんであそこにいたの?」
「それは…酔っ払って…酔いをさまそうって…」
「ほんと?俺が待ち合わせしたあの場所を忘れていたら……チャンミナはどうするつもりだった?俺のことはもう嫌になった?」
「そんなっ嫌なんて…」

そんな事考えもせずに飛び出した僕は
ユノさんの言葉に驚いて振り返ろうとしたのに


「…今は違うかもしれないけれど…このままじゃそう遠くない未来にそうなる気がするんだけど…違う?俺はそんなのヤダからな?」

それからユノさんは
僕の首元へ頭をグッと寄せて、大きく息をついた。

震えるているような息。
僅かに触れる頬。
髪のチクチクとした感触と、なにかつけているのか仄かに甘い香りがする。

「チャンミン…場所変えてゆっくり話そう。俺の話を聞いて…全部話すからなんでも聞いて」
「……」

俯いたまま動かない僕にユノさんが優しく腕をさすってくる。

「なに聞いた?何を言われた?」

その言葉に僕は唇を噛みしめる。


…そんなの
答えられない。

口にするのが怖い。


「…ひとつ先に言っておくけどさ。誰がどう話したか知らないけど、俺はここのところの仕事に関しては何一つ後悔しているものは無いからね?」

「……うそだ…」

そんなユノさんの言葉にもう堪え切れなくて。
僕は掠れて震えた息を吐いてしまう。

「チャンミンっ?!」

「………ユノさん……ごめんなさい…」

僕の声に驚いて緩んだ腕を離してから

「……僕…ユノさんの夢を消してしまいました…」

そこまで言って向き直ると頭を下げた。

「…本当にすみませんでした。もし…もし今からでもなんとかなるなら…僕…」
「チャンミン」

名前を呼んだユノさんが僕の肩を掴んで引き上げたから、僕は逆らえず体を持ち上げたけれど顔はあげられなくて

「モデルやります……もう遅いですか?」
「ねぇチャンミン」
「僕やりたいです。だから…」
「……」

鼻を啜り上げたらユノさんの大きなため息と共に手が視界に見え
掌がそのまま僕の顔を一回ぐっと拭ったかと思ったらそのまま顎を掴まれた。

……?!

急に上向かされた視界に目を見開くと
それからすぐにユノさんでいっぱいになる。


さっきまで聞こえていたはずの街のざわめきが消え
遅れた思考が今起こっている事を数秒後に伝えてきた。


……キス…されてる?


それからお互いの唇の柔らかい感触が離れかけて。

もう一度駄目押しのように重なった熱が
じんわりと痺れ運び
全ての機能が止まったようにただ目の前のユノさんに瞳だけが動く。

「チャンミナ」

じっと見つめてきたユノさんは僕の肩を掴むともう一度抱きしめた。




「俺はお前にモデルはやって欲しくない。どんなにいいオファーでもお金を積まれても俺は嫌なんだ。今回のが仮にお前に直接話がいったら俺が全力で阻止していたよ。もうあんな思いはしたくないからね」

それから何かを逃すようにもう一度大きく息を吐き出す。

「それからなにより、チャンミナを嫌な気分にさせるとか泣かせるなんてありえない。その方が俺には何百倍もつらいっ。あーー俺なにやってんだよ…どうしたらわかってくれる?なぁ、どうしよう?」


どうしようって……

こんな風にされて僕は既に
胸が苦しくて、呼吸もおかしい。
身体中の体温が急上昇して倒れそうだ。


「お願い…これだけは分かって。チャンミナはこれまでの恋愛と違う。何もかも全て……全部今この瞬間知ってほしいくらい…」

抱きついたまま犬のように僕の肩に頭を何度か擦ると、もう一度今度はぎゅっと頬を寄せてくる。

「……俺の中の感情、感覚全部。……お前が笑うのが心から嬉しいし悲しませるなんてありえないから。本当は誰にも接触させたくないぐらいなんだ。それこそ多種雑多な目に晒すなんて、モデルなんてあり得ない。今すぐに閉じ込めて自分だけのものにしたいのに。……それぐらい好きなんだよ。お願いチャンミナ…どうか分かって…」







ああもう…





……………顔が熱くて



さっきから目がチカチカして

倒れそう。





「……ユノさ…」
「チャンミナ?!」

ユノさんの名前を呼ぶのが精一杯で、僕はその場でへなへなと腰が抜ける。



「…ユノさ…ん………それ……は………はずか…し…」


「お、俺?!」



膝が落ちてへたり込む僕の腕を取ってくれたユノさんを見上げたら、その姿は首から上が真っ赤で、目が潤んでいる。


「…俺…必死なんだけど。……そんなこと言うなよ…」


眉を下げたユノさんは額に汗をかき
そのまま大きくため息をついて片手で顔を覆ってしまったから、僕は急にこみ上げた可笑しさにヘラヘラと笑ってしまう。


「だって……そんなこと言うんだもん。……僕どうしていいか…」

「それは俺のセリフなんだけど………これ……どうすりゃいいんだよ…生きて来た中で今一番恥ずかしくて叫びそうなのに…」


顔を覆ったまま天を仰ぐユノさんに、僕はとうとう声を上げて笑ってしまう。


泣き笑い。
誰かにこんなにも熱く想われて
あっという間に全てを塗り替えてもらう言葉を聞くなんて。
もうさっきあんな風に思ったことが逆に申し訳なくなるぐらい。
幸せな色に染まっていく。



「ユノさんのおかげで…酔いも吹っ飛びました…」

そう言ったら苦笑したユノさんが僕の腕を引き上げてくれた。
立ち上がると目の前のユノさんは笑っていたのに泣きそうで、それから僕の顔を見てもう一度ホッと息をついて抱きしめてくる。


「ユノさん…他の人にも言っていたんでしょ?」
「言うかこんなこと」

よく見ると暗がりで胸元迄赤いユノさんに、堪えきれず笑ってしまったら、ユノさんは笑みを浮かべて僕の腕を掴んだ。

「待ってて、今荷物とってくるから。うちで飲み直そう。ゆっくり二人でさ…」

チュッって頬にさりげなくキスをして僕から離れたから
今度は僕がその腕を掴んだ。



「チャンミナ?」

目が丸くなるユノさんの表情に僕は頷いて
それから腕を絡めてぎゅっと体を寄せる。

……ああ、なんだろう?
僕この人といるとすごく幸せ。

幸せっていろんな種類があると思うけれど
今僕が感じているのはこれまでに感じたことがないもの。

こんなにも僕を大切に想ってくれるこの人を
信じられないわけがない。



「ユノさん?僕ここで帰っちゃったらリュウさんとシウさんに次に顔合せづらくなっちゃうじゃないですか。何度も僕はあの二人にいじめられているんです。今日はここでしこたま飲んで、美味しいもの食べましょうよ」

そこまで口にして
ふと妙案が浮かんだ。

「あ、そうだ。ちょうどいいです。今日はあの二人にユノさんのこれまでの女性遍歴を聞いてみることにします」

「ちょっと待て」

途端に立ち止まったユノさんをひきづるように僕は階段を降りていく。


「だってさっきユノさん全部知られてもいいって言いませんでしたっけ?……違いましたっけ?…今日はあの二人を困らせるのは僕です。あーユノさんもかなぁ…」

「……」


言ってしまったらベラベラと色んな箍が外れて言葉が出て行く。
そんな僕に向けられて大きく開いていく口と瞳に、これ以上ないぐらい笑顔を向ける。

「あ、ユノさん家に今日は泊まろうかなぁ。僕ユノさんの手の早さと軽さにショックでベロベロに酔う予定なので、そうなったらおんぶして部屋まで連れてってくださいね。泣きますよ。愚痴りますからね。面倒くさくても構ってくださいね。僕前におんぶしてあげましたよね?」

そこまで言って入口の前まで来たから
言葉が出ないユノさんを気にせず
僕は勢いよくドアを開けた。












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明日は最終話。
面倒くさいチャンミンにユノさん頑張ってください(笑)

それではお暇なときに覗きに来てね(=゚ω゚)ノ



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10 Comments

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2018/12/25 (Tue) 20:25 | REPLY |   

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2018/12/25 (Tue) 20:46 | REPLY |   

くみちゃん  

あーーチャンミンが笑顔になってくれて良かったぁ~❤いつもいい子のチャンミンがめんどくさい奴になってるけどユノ!!ちゃんと聞いてあげてね(๑•̀ㅂ•́)و✧グッ!

2018/12/25 (Tue) 21:43 | REPLY |   

723621mam  

チャンミンそれ妙案。ぷぷぷ。

2018/12/25 (Tue) 21:56 | REPLY |   

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2018/12/26 (Wed) 16:16 | REPLY |   

くるりん@  

Re: タイトルなし

ゆ*まさま

ユノさんちょっと溺愛しすぎかな(笑)
もっとくどいくらいに愛を語ってたからこれでも削ったんですw
喜んでもらえてよかったー( *´艸`)

2018/12/26 (Wed) 20:02 | REPLY |   

くるりん@  

Re: タイトルなし

み*さま

ありがとうございます(ノД`)・゜・。
この二人は本当に仲良しでラブラブさん。
ユノさんが離したくない気持ちが分かるよなぁ(*ノωノ)

2018/12/26 (Wed) 20:04 | REPLY |   

くるりん@  

Re: タイトルなし

く*ちゃんさま

喜んでもらえてよかったヾ(≧▽≦)ノ
最終話は超面倒くさいチャンミンとそれをしっかりとお相手するユノさんですw
最後は…まぁ…( *´艸`)

2018/12/26 (Wed) 20:06 | REPLY |   

くるりん@  

Re: タイトルなし

723621mamさま

チャンミン妙案でしたがブーメラン食らってます(笑)

2018/12/26 (Wed) 20:07 | REPLY |   

くるりん@  

Re: 最高!(≧∀≦)

チャ*トモさま

ありがとうございますm(__)m
私のお話はただただ私の萌えの羅列w
共感して楽しんで貰えて嬉しいです(ノД`)・゜・。

2018/12/26 (Wed) 20:08 | REPLY |   

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