MOFU 「履行・急」 13


(Changmin)








「はぁーっ、お腹いっぱい」
大きく息を吐き出し、広すぎるベッドに寝転んだ。
天蓋から垂れる白い布が何枚か避けられ、それでもまだ幾重にもかかる外側で召使さん達がテーブルの片付けをしているのが薄っすら見える。
不均等に重ねられている白い布が外からたまに入る風にゆっくり揺れて、少し火照った身体に気持ちいい。ちょっときつめの運動をしてご飯も食べて身体が充足感いっぱいだ。
「眠そうだな」
「ネンさんの美味しいご飯が食べられて幸せです」
ベッドに上がってきたユンホさんは横に寝転がり、僕の顔に風で流れた髪をそっと避けてくれた。
「ネンのご飯で幸せを感じるなんて」
ボソリと零した言葉に思わず吹き出してしまう。
「ヤダなー!ユンホさんはいつも食べてるからそう思うんですよ。本当に美味しいんだから」
「そういう事を言っているんじゃないよ」
「うわっ?!」
呆れ半分の息を吐き出してユンホさんが僕を引き寄せ抱き締めた。
「俺以外の事で幸せなんて言うからだよ」
「はい?」
そう言いながら足まで絡めてくる。
おかげで僕はユンホさんの抱き枕状態だ。
「俺が一番の幸せを感じさせたいのに」
「……ぁ」
「お前を心から愛しているのに」
「あ、愛っ?!愛しっ……」
子供の我儘のようなイントネーションでさらりとすごい事を呟いて更に腕に力が籠る。ぎゅうぎゅうにひっついた身体に僕はいつものノリで言葉を返すことが出来ずあわあわと口が回らない。
たしかに結婚式したし、当たり前なんだけど。そうなんだけど。
ここまでストレートに言葉を向けられると、とてつもなく恥ずかしさが込み上げる。
何度もベッドを共にし甘い言葉を聞いていたのは異常事態か非常事態時で、恋人同士のようなやり取りも何処かドラマや映画の世界のようだった。だからあんなことも出来たところがあったけれど、急にこれからは現実ですと言われても実感湧かないしどちらかと言うと小っ恥ずかしい。
ユンホさんはもう恋人どころか結婚相手。生涯の伴侶にしてって言ったのは僕だけれど。
勢いって怖いな。さっきまでの傲慢無礼な僕はどこ行った。
「あのさ……ユンホさん」
ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる苦しさに耐えかねて、胸をそっと押すとすぐに間近の眉間に皺が寄る。
「どうして離れる?」
「いや、なんかその……わぁっ」
僕が言葉を濁しじっと見つめる視線から顔を逸らしたら、クッと顎を取って再び正面を向かされた。
「その……なんだ?」
「いやいやいやいやっ!なんかっ!」
「なんか?」
首を振れば瞳が細まり訝しげにますます眉間に皺が寄るから、うまい躱し文句も浮かばず観念するようにため息をついた。
「だって、なんか……本当の夫婦になったんだなぁなんて思ったら……どんな態度を取ればいいか分かんなくなっちゃって、落ち着かないんです」
「……そうか」
そう言ってから暫く僕を見つめていたユンホさんは、急に起き上がるとベッドを降りて天蓋を抜けて出ていってしまう。
「ユンホさん?!」
あまりの突然の行動に引き止めることもできず、その後ろ姿が消えた後を呆然と見つめていたら、暫くしてお茶のセットを手に戻ってきた。
「それどうしたんですか?」
「ネンのお茶だ、用意させた」
「こんな短時間?!」
「ああ、そこにいるからな」
「えっ?!そこ?!」
ベッドの上にトレイを置くとサムズアップした親指を後ろに向けるから、見えもしない天蓋のその向こうのネンさんを探してしまう。
「なんで」
「言っている意味が分からない。慣れろ」
「ええっ」
そういえばさっき目が覚めたとき当たり前にご飯の用意をしてくれたのはもしかしてもしかしなくてもそう言うことか?!
「僕達さっきからその辺の人に色んなこと見聞きされてます?」
「以前風呂で話したよな?」
「あー…………」
プライバシーゼロに近いってこれかぁ。
だからベッド周りはせめて中が見えないようにこんなに何重にも布が下りているのかな。
肩が落ちるほどの脱力感に声を上げた僕の横で、これまでそんな生活を当たり前にしていたユンホさんは澄ました顔で胡座をかくとトレイの上のお茶を注ぎ始めた。小ぶりの薄い陶器の器に琥珀色の波が広がり良い香りがしてきた。
甘酸っぱい香りにあれ?っと思う。以前どこかで嗅いだことがある。向こうでのおやつタイムの時だっけ。
「これ向こうで飲みましたよね?」
「いや、俺は無い。ネンが身体が温まっていいと言って渡された。落ち着くって」
「そうですか……ありがとうございます」
落ち着かないって言ったからお茶を用意させたんだ。
僕の事を想って速攻動いてくれる優しさに口元がにやけそうになるのを堪えていたら、目の前でユンホさんがクイっとお茶を飲み干して余韻を楽しむように目を瞑ると鼻から息を吐く。
「うん、いい香りだ」
笑顔につられて僕も口にすると、確かにスッキリとした喉越しの後に柑橘系の甘酸っぱさが鼻へ抜けてとても美味しい。
「あ、ほんと。食後にこれあってますね。さっきはまぁまぁ食べたし」
「まぁまぁ?」
さっきの僕の食事を思い出してか、口を曲げて半眼になる。
何を言いたいのか分かるけれど、そんな顔しなくても。
最初に出してくれた諸々を平らげた挙句パスタとサンドイッチを追加した。
「いやー美味しかった。本当にネンさんの料理は最高です」
あの絶妙な調理と味付けはその辺の人気店なんて太刀打ちできない。
「……ッ」
一気に飲み干し大きく頷いたら舌打ちが聞こえ、素早くユンホさんの手が僕の身体を捕らえ腕の内に引き寄せられた。揺れたベッドに茶器の甲高い音が響き、驚いてその顔を見たら僕は持っていた空の器を取り上げられる。
「なんですかっ?!」
「ほら、また……ネンっ下げろ」
ユンホさんは目を眇めトレイに器を置くと、僕の上半身を抱きかかえたまま行儀悪く片足でベッドの隅に限界までトレイを押し出した。
「ユンホさん?!」
「……失礼します」
さっきいたと思われる場所から移動して、もうすぐそこに控えていたと分かるほど素早い動きでネンさんが天蓋を捲り頭を下げると、こちらを全く見ずにトレイを手にしてこれまた速攻外へ消える。素早い。さすが人狼と褒め称えたいけれど、今は頬を荒いため息が掠めて身に迫る恐怖にそれどころでは無い。
恐る恐る目を向けると、怒りを通り越してどちらかというともう諦めの色が浮かんでいる。
「ユンホさんってば、怒らないで」
宥めるように腕を撫でた僕の困り顔にふんと鼻を鳴らし、抱きしめたまま一緒に寝転がされて抱き枕再びだ。
「もうネンの賛辞は終わりでいいだろう?」
ため息を吐きつつ僅かに腕の力が緩むと、勢いで乱れた髪を何度も撫でて梳かしてくる。
節くれだった大きな手。繰り返される優しいタッチの心地良さに、体の力が少しずつ抜けていく。
「お前はさっきから双子ばっかりだ。これ以上嫉妬させるなよ」
ボソボソと耳元で聞こえた言葉に堪らないほど至福の震えが起きる。
頬が熱い。
嬉しい。
かっこよくて可愛い人が僕に嫉妬の情を見せてくれる。
「……俺の事をかまえよ?」
甘えて拗ねた声。
ああ、なんだよもう。
身体中が熱くて燃え上がりそうだ。
ついさっき感じた恥ずかしさや困惑が吹っ飛ぶほど自分を好いてくれていると分かる態度は、僕を高揚させ、一気に上がった血流に目眩に似た浮遊感を感じる。
潤んできた視界にユンホさんの笑顔が見えて、僕の手をとるとチュッと指先にキスした唇が口元へ近づく。
優しく触れるキス。
……そうだよね。
ユンホさんはここまでの僕自身を見て好きになってくれたんだ。ザンが言っていたじゃんか、相手を想う気持ちは変わらない、その過程が違うだけ。何を臆する事があるんだろう。今までの、このままの僕でいいんだ。
「うん。じゃあ喜んでかまってあげる」
「お願いするよ」
ハハッと笑う息が肌に届き、僕も笑い返して片手をその頬に添え、自分でも分かる意地悪な表情でそれに応える。
お互い軽く唇を噛み合い深く口付ける。舌先を何度も絡める。
背中に回った片手で易々と体勢を変えられ僕はユンホさんに組み敷かれた。抵抗するどころか全てを委ねて何されても怖く無い。どちらかと言うとめちゃくちゃにされてもいい。
「……ぁ」
そう想った途端ふんわりと甘い香りが漂ってくる。
いい匂い。スンッと鼻を鳴らしてしまう。
これは以前嗅いだユンホさんの香り。僕の五感を麻痺させて心までも奪うもの。
全身が炭酸水のように痺れ、この先に待つ快楽に身悶えて思わず握り合った片方の手の指の力を強めた。
僕を見下ろすユンホさんの瞳が朱色に変化していく。
それを見て僕の下腹部が引き上がったように畝る。あの熱と鮮血のような赤い瞳で見つめられたい。意識が飛んでしまうほどの快楽が味わいたくて仕方がない。
「ユンホさん……欲しい」
「うん」
思わず口にしてしまった言葉に、ユンホさんが溢れるような笑みを見せた。
「全ての灯を消せ」
ユンホさんの言葉に天蓋の布が何枚も落とされる重たい音と、一瞬で夜を迎えた室内にはっと息を呑んだ。







────────────
と、言うことで明日は鍵記事です、数字のご用意を。
ヒントは「アルバムTIMEで話題になった数字」です。
12字。上記の単語で検索かければすぐ出る数字です。
鍵の場所に書いてある順番で間違えずに入力してください。
全角ではなく半角英数です。以上。

ご質問には一切お答えできません。
宜しくお願いしまーす_(:3 」∠)_
ここから2話濃い目だよ。苦手な方は読まないでね。




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6 Comments

くみちゃん  

ユンホさん‥‥欲しい‥‥|´Д`ハァハァ❤❤❤って今日が鍵かと思ってスキップして来ましたけど?くるりんにやられました_( :⁍ 」 )_何か直ぐ待機している双子ちゃん達に聞こえるくらいラブラブでお願いしますm(_ _)m今日から凄く寒くなって来ましたね!くるりんさんも風邪など引かないようにご自愛くださいね(๑ˇ3ˇ๑)

2021/11/23 (Tue) 20:19 | REPLY |   

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2021/11/23 (Tue) 21:03 | REPLY |   

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2021/11/23 (Tue) 21:13 | REPLY |   

くるりん@  

Re: タイトルなし

くみちゃんさん

あーごめんなさい!鍵は今日です。
本当はここからかけようかと悩んだんだけど、結局挿入無いから鍵かけずに来ちゃいました。
ただもう悩むことなくこの先最後まで仲良しさんな二人なんでああいう風に書いちゃいました。
ほんと朝晩急に冷え込んできたね。くみちゃん様もご自愛してね(*'ω'*)

2021/11/24 (Wed) 19:21 | REPLY |   

くるりん@  

Re: タイトルなし

k**aさま

大丈夫、多分いません。今は(笑)
これねーほんとはもっと視線を感じながら変態チックに書くっていう案も頭の中にあったんだけど、どーも気力が無くてやめちゃったんだよね。
そう、これ話すっとぼけた中に(最初の契約だったかな)、男も子供産めるんですってネンさんが言っている箇所があるの(笑)だからネタ撒いてあるからやろうと思えばMOFUのチャンミンは子供産めるんだよね。やめればいいのにこれにちなんでもう一つ今回の話の中にネタ撒いといたし。書くかどうか分かんないんだけどね。こういうネタ撒いとくの好きでねー(/・ω・)/←だめだめ。だから話が穴だらけになる。

なんかチャンミンの嫁ネタ出てきたね。
なんというかまぁ、このまえみたいな日本向けにこれから頑張っていこうと思っているなら、日本の有名アイドルが結婚をどう扱っているか少し考えてほしいけどね。
ま、ステージで生で言わない限り見て見ないふりしようかなと思ってるけど。

2021/11/24 (Wed) 19:33 | REPLY |   

くるりん@  

Re: タイトルなし

チ****11さま

一旦召使の皆さんは引き上げましたが、まぁ、あれです(笑)←なんだそれ。
この二人が本気出したら濃すぎてお腹いっぱいになりそうだけどwww
もう何年この鍵なんだろう。ちなみに私は覚えてません( ゚Д゚)設定しっぱなしー。
甘い二人を楽しんでもらえたら嬉しいです、

2021/11/24 (Wed) 19:40 | REPLY |   

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